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自他をわける境界線

2023 12/08
スタッフブログ
2023年6月23日2023年12月8日

ブログをご覧いただいているみなさま、こんにちは。精神障害・発達障害の方々の就労を支援しております就労移行支援事業所ペガサス平塚センターの宇佐美です。

 ところでみなさまの中で、幼いころに「みんな、持ってるから買って」などと、ねだった経験はないでしょうか?
今思えばしょうもないもので、私も小学生のころにそんなことを言った経験があります。
母は私が心から欲しいと願ったものは大概与えてくれましたが、子供の常套手段であろう「みんな持ってるから欲しい」は全く通用しませんでした。
私が『みんな』を持ち出すと、母は決まって「『みんな』ってだあれ?」と聞いてきました。
こんなときたいてい『みんな』として名前を挙げることができたのは、せいぜい3~4人だったような気がします。

そして答えに詰まる私に、母はよく「人は人、自分は自分」と言ったものでした。

時にその言葉に、救われることもありました。
運動神経の鈍い私は、いつまでたっても逆上がりができませんでした。
「みんな、私のことを笑う」
そんなことを言って、メソメソと泣く私に、母は問うのでした。
「『みんな』ってだあれ?」と。

目次

『みんな』という曖昧な主語

『みんな』という主語は、とっても汎用性があって便利なものでありますが、ときにそれに自分が振り回されることもあるように思います。
「みんなが私を責めているのではないか?」
「みんなは私を無能だと思っているのではないか?」

そんな考えが回り出すと、『みんな』という存在は瞬く間に大きく膨れ上がり、自分がどんどん飲み込まれていくことでしょう。

そして、「そんなことはないよ」などという他者からの声かけがあっても、その声はもはや届かなくなってしまうのだと思います。

そんなときは、一度浮かんでくる考えを【 】でくくってみてください。
そして、「私は」と「思う」を前後につけてみてください。

私は【みんなが私を責めているのではないか】と思う。

どうでしょう。
『みんな』の考えだと思っていたものは、実は自分の考えだということに気付けるのではないでしょうか。

誰もが曖昧になる自他境界

先日、ペガサス平塚センターの自己理解講座では、利用者のみなさんと自他境界について考えました。

『自他境界』というのは、自分と他者をわける境界のことで、「自分以外の他者は、自分とは別のものである」という至って当たり前かつシンプルな定義です。
なんだか「私以外私じゃないの、当たり前だけどね〜♪」なんて、数年前に流行ったあの歌を口ずさみたくなりますね。
ちなみに、この『自他境界』と同じような意味で、『自他分離』『バウンダリー』という言葉が使われることもあります。

ところで、生まれたばかりの赤ちゃんには自他の区別がなく、自分の中での出来事か自分の外での出来事かわからないそうです。
確かに生後1、2か月のうちは、赤ちゃんが自分の手に驚いて泣き出さないようにするために、体をガーゼで覆って沐浴させたものです。
生後3か月ごろには、自分の手をじっと見つめる時期がありますが、それは自分を自分として認識し始める第一歩だそうです。

誰もがそんなところから始まって、自分を自分として認識すると同時に、自分とは別の存在として他者を認識していくのですが、なかなかこの自分と他者の境界を明確にするということは難しいようです。

例えば、周囲の忙しそうなピリピリとした空気に、自分まで心がざわつき居心地の悪さを感じたことはないでしょうか?
また、相手が不機嫌だと、「自分が何かしたのかな」と不安になったり、人から誘われると行きたくもないのに断れなかったり、そんな経験をしたことはありませんか?

講座では以上のような質問を16個用意して、みなさんにチェックしていただきました。
中には10個以上チェックがついたという方もいらっしゃいましたが、逆に1個もつかなかったという方はいませんでした。
私も2個つきました。

自他境界が曖昧になるパターンは大きく分けて2つあり、
①自分の考えや感じ方、価値観を他者に広げていくパターンと、
②他者の考えや感じ方、価値観を自分に広げていくパターンです。

「自分と他者の価値観は異なる」という理屈は理解できても、置かれた状況や周囲との関係性なども影響して、誰でも時々曖昧になってしまうものです。

講座の中で、「ついつい他人から頼まれると引き受けてしまう」という経験を話された方がいらっしゃいました。
ブログをご覧頂いている方々の中にも、同じような経験をされている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
おそらく優しい方なのでしょう。
自ら引き受けたいという思いがあればもちろん問題ないのですが、もし断ることへの罪悪感をお持ちでしたら、それは抱く必要のないものです。

相手と自分の間にしっかり境界線を引いて、自分を守ってよいのです。

自分と相手の両者を守る境界線

「相手との間に境界線を引く」というと、どこか冷たい感じがするかもしれません。
しかし、それは突き放すということとは違います。
相手が涙を流していたのなら、手を差し伸べるのは良いことです。そして、相手が安心できるようにそっと相手の手を握ってあげることも良いことです。

しかし、このとき良かれと思って、相手の腕をぐいぐい引っ張り、自分の領域に引きずり込み、自力で立ち上がる機会を相手から奪ったり、逆に相手に引っ張られて相手の領域に入り込み、一緒になって心を乱してしまったりすることが問題であり、それは自分にとっても相手にとっても不幸なことです。

これは、親子の関係であっても同様だと思います。
境界線を引くというのは、自分を守ることと同時に、相手のことも尊重することになると思います。

最後にもうひとつ、自他境界の曖昧さがもたらす苦しみのひとつに、他者比較もあると思います。
みんなは出来るけど、自分はできない。
みんなは頑張っているのに、自分は頑張れない。
こんな嘆きがもし自分の中に沸き起こったなら、「『みんな』ってだあれ?」と自分に問いてみてください。
そして、「自分は自分、人は人」と呟いてみてください。

あなたはあなたであり、そのことがすでに何よりも尊いのですから。

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