もう限界だった。あの日、私は会議室のトイレで泣いていた
「今度のプロジェクト、君に任せたいんだけど」
上司のその言葉を聞いた瞬間、私の体は自然に「はい、頑張ります」と答えていました。でも心の中では悲鳴を上げていました。
(また…またこのパターンか…)
2024年3月、当時35歳の私は、都内のIT企業で営業事務として7年間働いていました。残業は月60時間。給与は額面で年収420万円。昇給は年に3,000円ずつ。
そして何より辛かったのは、「このままでいいのか?」という問いに答えられない自分でした。
転職サイトの「保存した求人」が、いつの間にか23件になっていた
毎晩、布団の中でスマホを開く。転職サイトをスクロールする。
「Webマーケティング担当募集」
「カスタマーサクセス職」
「人事・採用担当者」
どれも魅力的に見えました。「未経験歓迎」の文字に、一瞬だけ希望が湧きました。
でも、応募ボタンを押せない。
職務経歴書の「志望動機」欄を前に、キーボードに置いた指が動かない。30分が経過。1時間が経過。気づけば、そのまま求人を「保存」ボタンに押すだけ。
「自分には無理だ」
「どうせ書類で落とされる」
「今の会社を辞めたいけど、次なんてあるわけがない」
そんな思考のループに、私は完全に囚われていました。
その時の私が知らなかった「残酷な真実」
後から分かったことですが、あの時の私は致命的な勘違いをしていました。
❌ 私の勘違い:
「7年間、事務職しかやってこなかった。特別なスキルはない。だから転職市場では価値がない」
✅ 本当のこと:
「7年間で培った業務効率化スキル、部門間調整力、データ分析経験は、多くの企業が『喉から手が出るほど欲しい』スキルだった」
でも当時の私には、それが分かりませんでした。
なぜなら自分の市場価値を、客観的に測ったことが一度もなかったからです。

「次がない」と思い込んでいた私が、実は失っていたもの
📊 私が計算した「行動しないコスト」
転職を先延ばしにすることで、私は具体的に何を失っていたのか。ある日、ノートに書き出してみました。
経済的損失:
- 市場価値に見合う年収との差額:年間約80万円
- 7年間の累積損失:約560万円
- この金額があれば、車が買えた…
時間的損失:
- 意味のない会議に費やした時間:週8時間 × 52週 = 年間416時間
- 不要な報告書作成:週5時間 × 52週 = 年間260時間
- 合計:年間676時間(28日間)を無駄にしていた
精神的損失(これが一番大きかった):
- 毎朝、目覚まし時計を5回止めてからやっと起きる
- 日曜の夜、翌日のことを考えると胃が痛くなる
- 友人の「転職して年収上がった!」という話を聞くたび、劣等感に苛まれる
転機は、友人の何気ない一言だった
2024年6月のある土曜日。大学時代の友人、美咲と久しぶりにランチをしました。
彼女は3ヶ月前に転職したばかり。表情が明るく、話す言葉の端々に「充実感」が滲み出ていました。
「ねえ、どうやって転職先を見つけたの?」
私の質問に、美咲はこう答えました。
「転職エージェントに相談したの。最初は『まだ転職するか決めてないんですけど…』って遠慮してたんだけど、『それで全然大丈夫ですよ』って言われて。むしろ、自分の市場価値を知ることから始めましょうって」
市場価値。
その言葉が、私の胸に突き刺さりました。
「私、自分の市場価値なんて考えたことなかった…」
最初の一歩は、想像以上に簡単だった
Step 1:転職エージェントへの登録(所要時間:15分)
美咲に教えてもらった大手転職エージェント2社に登録しました。
- リクルートエージェント(総合型・求人数が多い)
- マイナビエージェント(20-30代に強い)
登録フォームに入力したのは:
- 基本情報(名前、年齢、居住地)
- 現在の職種と年収
- 希望する職種(ざっくりでOK)
- 職務経歴(箇条書きでOK)
重要な発見:
「完璧な職務経歴書を準備してから登録しなきゃ」と思っていましたが、それは不要でした。エージェントが後から一緒に作ってくれます。
Step 2:キャリア面談の衝撃(1週間後)
リクルートエージェントから連絡が来たのは、登録から3日後。
「来週、お時間ありますか?まずは30分ほどお話しさせてください」
平日の夜19時、オンラインで面談がスタートしました。
担当は、30代後半くらいの女性キャリアアドバイザー、田中さん(仮名)。
最初の質問は意外なものでした。
「これまでの業務で、一番『やっててよかった』と思えた瞬間を教えてください」
私は考えました。事務職で、ルーティンワークばかり…でも、一つ思い出しました。
「部署間の情報共有がバラバラで非効率だったので、Notionで社内Wikiを作ったんです。最初は誰も使ってくれなかったんですけど、使い方を丁寧に説明して回ったら、今では全社で使われるようになって…」
田中さんの目が輝きました。
「それ、素晴らしいスキルです」
え?
「川村さん(私)は、課題を自分で見つけて、ツールを選定して、社内に浸透させるという、一連のプロセスを経験されてるんですね。これ、『業務改善力』『ツール導入スキル』『社内調整力』という3つの市場価値の高いスキルです」
私の「当たり前」が、実は「市場価値」だった
田中さんが教えてくれた「隠れたスキル」
面談は1時間半に及びました。田中さんは私の話を丁寧に聞きながら、次々と「市場価値」を見つけてくれました。
| 私が思っていたこと | 実際の市場価値 |
|---|---|
| 「ただのExcel作業」 | データ分析・可視化スキル(VLOOKUP、ピボットテーブルが使える人材は需要高) |
| 「上司と部下の間で調整してただけ」 | ステークホルダーマネジメント力(IT業界で超重要) |
| 「新人教育を頼まれてやってた」 | 人材育成スキル(マネージャー職への適性) |
そして、決定的な一言。
「川村さんの経験とスキルなら、年収500万〜550万円の求人に十分応募できます」
え…今より100万円以上高い…?
非公開求人という「隠された宝箱」
一般には出回らない求人の世界
田中さんは続けました。
「実は、優良企業の多くは『非公開求人』でしか募集していないんです。応募が殺到するのを避けるため、信頼できるエージェント経由でのみ採用活動をしているんですね」
面談後、田中さんから送られてきた求人リストを見て、私は驚きました。
- BtoB SaaS企業のカスタマーサクセス職(年収500万円〜)
- 人材系企業のキャリアアドバイザー(年収480万円〜+インセンティブ)
- Web制作会社のプロジェクトマネージャー(年収550万円〜)
どれも転職サイトでは見たことがない求人でした。
「未経験歓迎」ではなく、「あなたの経験を活かせる」求人。
これが、エージェントを使う最大のメリットだと実感しました。
職務経歴書を「市場価値を証明する武器」に変える
Step 3:職務経歴書のブラッシュアップ
田中さんのアドバイスを元に、職務経歴書を全面的に書き直しました。
❌ Before(以前の私の書き方)
【業務内容】
・営業部門の事務サポート
・請求書作成、経費精算
・会議資料作成
・来客対応
✅ After(田中さんのアドバイス後)
【業務内容と成果】
■ 業務効率化プロジェクトの企画・推進
・部署間で分散していた情報管理の課題を特定
・Notionを活用した社内Wiki構築を提案・導入
・結果:情報検索時間を1日平均30分削減(部門全体で月100時間の削減効果)
■ データ分析による営業支援
・Excelを用いた営業実績の可視化レポート作成
・ピボットテーブル・VLOOKUPを活用し、週次での分析資料を提供
・結果:営業チームの受注率が15%向上(上司評価)
■ 新人教育プログラムの設計・実施
・OJT教育マニュアル作成(全30ページ)
・3名の新入社員育成を担当(全員が3ヶ月で独り立ち)
変化のポイント:
- 「何をしたか」だけでなく「何を達成したか」を数値で示す
- 業界用語を適切に使用し、専門性をアピール
- 「成果」を必ず記載する
この職務経歴書の威力は、想像以上でした。
書類選考通過率が劇的に変化した
データで見る「Before / After」
| 項目 | エージェント活用前 | エージェント活用後 |
|---|---|---|
| 応募社数 | 3社(自力応募) | 12社(エージェント推薦) |
| 書類選考通過 | 0社 | 7社 |
| 面接実施 | 0回 | 5社(7回) |
| 内定 | 0社 | 2社 |
最大の違い:
エージェント推薦は、職務経歴書と共に「推薦文」を企業に送ってくれます。これが、書類選考通過率を大きく上げる要因でした。
面接対策で学んだ「価値の伝え方」
Step 4:面接での「市場価値の言語化」
最初の面接は、BtoB SaaS企業のカスタマーサクセス職でした。
面接前日、田中さんとの模擬面接で教わったこと:
質問:「なぜ当社に応募されたのですか?」
❌ 私の最初の回答:
「カスタマーサクセスという職種に興味がありまして…」
✅ 田中さんのアドバイス後:
「これまで社内の業務効率化に取り組む中で、『ツールを導入するだけでなく、ユーザーが本当に使いこなせるまで伴走すること』の重要性を実感しました。御社の『顧客の成功を共に創る』という理念に強く共感し、私の経験を活かせると考え応募しました」
ポイント:
- 自分の経験と企業の求める価値を結びつける
- 「興味がある」ではなく「貢献できる」を伝える
給与交渉は、プロに任せて正解だった
Step 5:内定と条件交渉
2社から内定をいただきました。
A社:BtoB SaaS企業(カスタマーサクセス)
B社:人材系企業(キャリアアドバイザー)
どちらも魅力的でしたが、A社に決めました。理由は:
- 成長市場(SaaS業界)
- リモートワーク可(週3出社)
- 年収:530万円(現職比+110万円)
ここで田中さんが活躍しました。
当初の提示年収は510万円でしたが、田中さんが私の代わりに交渉。
「川村さんのデータ分析スキルと業務改善経験は、御社のカスタマーサクセス部門で即戦力になります。市場価値を考慮し、530万円でご検討いただけないでしょうか」
結果、530万円で合意。
一人では絶対に言えなかった交渉を、プロがしてくれたことに、心から感謝しました。
半年後の今、私の日常はこう変わった
具体的な「Before / After」の日常
😔 Before(旧職場)
- 朝7時起床。目覚まし5回止める
- 満員電車で1時間通勤
- 9時出社。Slackの通知に胃が痛む
- 意味のない会議が1日3本
- 20時退社。疲れ果てて夕飯はコンビニ
- 帰宅後はソファで転職サイトを眺めるだけ
😊 After(現職)
- 朝8時起床。自然に目が覚める
- 週3リモート。通勤ストレスが3/5に減少
- 9時半業務開始。顧客との打ち合わせが楽しみ
- 会議は必要最低限。議事録もテンプレ化で効率的
- 18時半業務終了。夕飯は自炊する余裕
- 夜はオンライン講座でさらにスキルアップ
最大の変化:
「明日が楽しみ」と思えるようになったこと
あなたの「次がない」は、ただの情報不足かもしれない
よくある質問に、経験者として答えます
Q1:転職エージェントって、本当に無料なの?
A:はい、完全無料です。私も最初は「後で請求が来るんじゃ…」と不安でしたが、一切ありませんでした。
エージェントは、企業から採用成功報酬を受け取るビジネスモデルなので、求職者は無料で利用できます。
Q2:まだ転職するか決めてないけど、相談していい?
A:むしろ、その段階でこそ相談すべきです。
私も最初は「転職するかどうか迷ってる」と正直に伝えました。田中さんは「それで全然OKです。まずは市場価値を知るところから始めましょう」と言ってくれました。
Q3:35歳で未経験職種への転職は厳しい?
A:職種によります。ただし、「完全未経験」と「活かせる経験がある」は全く違うことを学びました。
私の場合:
- ❌ 完全未経験:エンジニア、デザイナー
- ✅ 経験を活かせる:カスタマーサクセス、キャリアアドバイザー、プロジェクトマネージャー
エージェントが、あなたの経験をどう活かせるかを一緒に考えてくれます。
Q4:複数のエージェントを使っていい?
A:はい、むしろ推奨されます。
私は3社に登録しました:
- リクルートエージェント(求人数が圧倒的)
- マイナビエージェント(20-30代に強い)
- doda(非公開求人の質が高い)
ただし、同じ求人に複数エージェントから応募するのはNGです。
まとめ:市場価値を知ることが、すべての始まりだった
私が学んだ「3つの真実」
- 「次がない」は思い込み
→ 市場価値を客観的に測定していないだけ - 「スキルがない」も思い込み
→ あなたの「当たり前」は、他社では「価値」 - 「一人で転職活動」は非効率
→ プロの力を借りることで、成功率が10倍になる
今日から始められる「最初の一歩」
もしあなたが今、「今の会社を辞めたいけど次がない」と悩んでいるなら:
✅ Step 1:今日やること(15分)
- 転職エージェント2社に登録する
- おすすめ:リクルートエージェント、マイナビエージェント
✅ Step 2:今週やること(30分)
- キャリア面談の予約を入れる
- 正直に「まだ転職するか決めてない」と伝えてOK
✅ Step 3:来月までにやること(2時間)
- 職務経歴書をエージェントと一緒に作る
- 自分の市場価値を数値で知る
最後に:未来は、あなたの決断から始まる
あの日、私が転職エージェントに登録していなかったら。
今でも同じオフィスで、同じ不満を抱えながら、「次がない」と諦めていたかもしれません。
でも、たった15分の登録が、私の人生を変えました。
市場価値を知ること。
それは、あなたの可能性の扉を開く、最初の鍵です。
【注記】
この記事は、筆者の実体験に基づいていますが、転職活動の結果には個人差があります。ご自身の状況に合わせて、複数の選択肢を検討し、専門家(転職エージェントのキャリアアドバイザー)のアドバイスを参考にしてください。
